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明治前期

▶内務省衛生局

明治6年、内務省設立。地方行政と警察行政を中心に近代日本の社会生活に大きな権限を行使した。
岩倉使節団に随行し欧米の医療制度を視察した長与専斎は、帰国後文部省医務局長として明治7年「医制」を施行し、医学・衛生行政を創設。
明治8年に衛生行政が分離して内務省に移管されると、長与も内務省に移り初代の衛生局長に就く。公衆衛生の導入を積極的に進め、東京はそのモデル都市となった。

▶衛生警察

明治前期の衛生行政組織系統には、内務省衛生局に並行して、内務省警保局-東京警視庁という指揮系統があった。東京警視庁は内務省直轄の警護機関で東京府の衛生に関しても強制力をもっていた。
東京警視庁の職務は「東京警視庁職制章程並諸規則」によって、「人民の凶害を予防し世の安泰を保全する」
(1)人民の権利保護と生業・生活の安全(2)健康の看護と生命保全(3)放蕩やみだらな逸脱の規制と風俗矯正(4)政治犯の探索と警防と清掃行政に直接関係する規定がおかれていた。
東京警視庁はパリ警察をモデルとしていた。

▶コレラの流行

日本へ最初に上陸したのは1822年、中国大陸から朝鮮半島、対馬経由で上陸し西日本を中心に流行。
2回目は1858年、米国の軍艦が清国から長崎に持ち込み全国に流行。江戸における被害は最も大きく、およそ4万人が死亡したといわれてる。
明治以後は明治10年に流行し、以後周期的に繰り返した。もっとも被害が大きかったのは12年と19年で、東京では1万人以上の被害が出ました。
明治政府と東京府は「公衆衛生」確立の重要性を痛感し、近代衛生行政の整備を加速することになる。

▶公衆トイレの公営化

明治の中期ころまで、外出時の市民の放尿・脱糞は行政の対象とは考えられてなく、各人が始末するのが当然の状況であった。しかし、相次ぐ伝染病の流行で明治16年ごろから街頭に公衆トイレが建ち始めた。初めは木造が多く、各区バラバラで臭気もひどく街の美観も損なう状況であった。そこで、これを統一し、構造様式の仕様を定め材質も煉瓦造り、石造りとした。
明治36年、東京市は15区のトイレを直営とし管理・保守点検等を行った。
しかし、一般に公衆道徳なるものが認識不足であったため、部品や金具の盗難や破損、落書きが後を絶たず清潔保持は困難であった。

▶ゴミ・し尿処理

明治前期には清掃に関する規則はなく、江戸時代からの制度が引き継がれていました。
各戸から排出されるゴミは道端や空き地に積まれ、清掃業者がそれぞれの受持ち地域から、一定の場所に集め選別を行っていました。
明治5年10月「道路清掃に関する太政官布告」が出され初めて清掃事業法規が誕生。
炎気明治初期のゴミは有価物としての回収が中心で、もっとも重要なものは生ゴミ・藁を中心とした肥料芥で近郊の農村へ運んでいました。

▶東京市誕生

明治22年麹町、神田、日本橋、京橋、芝、麻布、赤坂、四谷、牛込、小石川、本郷、下谷、浅草、本所、深川の15区で東京市が誕生しました。
「市制」「町村制」は明治21年4月に公布、翌22年4月から施行されました。「市制」は人口2万5000人以上の市街地で独立の区域、または都市化の可能性を持つ地域に適用され京都ほか39市が誕生しました。

▶伝染病予防と衛生組合

明治19年コレラが発生、これを機に内務省は区町村に衛生組合を設置。
明治30年4月「伝染病予防法」を公布。これに定められた伝染病はコレラ、赤痢、チフス、ほうそう、発疹チフス、しょう紅熱、ジフテリア、ペストの8種類であった。
伝染病予防法が制定されると東京市は衛生組合設置規定を定め、市町村で一戸を構えるものは衛星組合に加入し、衛生思想の普及と伝染病の予防を行う義務を定められた。

▶民間団体の活動-大日本私立衛生会

都市衛生は法令や行政の問題ではなかった。特にコレラについては家庭や個人、町内、職場、学校、商店などあらゆる場所で清潔な環境が維持されなければ、根本的解決はありませんでした。
長与専斎は明治15年民間団体「大日本私立衛生会」を設立。政府の押し付け行政では弊害があり、人民の側にたった活動を繰り広げました。
明治19年「コレラ予防法心得書」を刊行、東京府庁・各郡区を通じ地主、差配人、人力車、馬車組合、旅館、理髪店、銭湯などに配布。
(1) 節度ある規則的食事
(2) 大酒を控える
(3) 腹を下しやすい食物を避ける
(4) 生水を飲まず食器なども湯で洗う
(5) 衣服・夜具の清潔保持
(6) たびたび入浴し身体を清潔に保つ
(7) 風邪・寝冷えの用心
(8) 家屋の乾燥・通風、室内や便所掃除を入念にする
(9) 宵越しのゴミ・生ゴミを家の周りに捨てない
(10) 下水・芥流・糞壷は4・5日に一度は浚い、人家から遠隔の地に捨てる
(11) 人の群集する場所に無用に立寄らない
(12) 親戚や近縁者でもコレラ発症の家には行かない
(13) 少しでも腹具合が悪い時は安静にして医者の指示に従う
以上、13項目にまとめたものであった。


清掃事業の歴史|各時代

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